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歴代受賞者(年度別)歴代受賞者(年度別)

2021(令和3)年度贈賞者リスト

(1) 計算工学大賞

Wolfgang A. Wall(ドイツ連邦共和国 ミュンヘン工科大学)
Wall氏は、ミュンヘン工科大学の教授兼イタリア国際解析科学センター (CISM) のセンター長であり、30年の長きにわたり重要でかつ独創的な研究を通して計算力学分野に強い影響力を与えてきた。特に、流体と固体のマルチフィールド・マルチスケール解析をベースに、種々な物理現象に関連した計算科学分野において極めて顕著な研究業績を有し、290編以上の論文を著し、IACMのComputational Mechanics Awardを始めとする多くの賞を受賞している。さらに同氏は、2012年から7年間IACMのECメンバーを務め、計算力学の国際交流への貢献も大きい。

(2) 功績賞

弓削 康平(成蹊大学)
弓削氏は長年、固体の非線形問題の有限要素解析およびトポロジー最適設計の研究に従事し、人材育成において多くの功績を残している。また、本会においては、1995年の設立当初より正会員となり、2004年度から8年間にわたり理事を、2018、19年度には副会長を務めた。とくに2010年の本会の法人化にあたっては総務担当理事として多大な貢献をした。
高原 浩志(計算科学振興財団)
高原氏は、本会理事として2006年度から5期10年間にわたり、会誌編集、会員、広報、財務関係の役職を歴任し、本会の運営基盤拡充に努めるとともに、広く計算工学の普及と社会的な理解増進、さらには本会の活動・実績の産業界への訴求において、多大な貢献をしてきた。また企業においては、地球シミュレータをはじめとする高性能計算機や関連アプリケーションソフトウェアの企画・開発・整備、国内外でのプロモーション、技術サービス等を通した応用に深く関わり、特筆すべき実績をあげた。

(3) 川井メダル

岡澤 重信(山梨大学)
岡澤氏は、弾塑性力学・有限変形問題・座屈問題・構造流体連成・衝突性能評価など幅広い分野において、25年以上の長きに渡り理論および計算工学的な研究に取り組んできた。その研究成果はいずれも独創的なものであり、なかでもオイラー型構造解析における研究は国内外での唯一性が際立ち、2014年度に本会論文賞を受賞している。同氏は2014年度から3期6年に渡って本会の理事を務め、2017、18年度は本会主催の計算工学講演会の実行委員長を務め、本会の運営にも多大な貢献をしてきた。

(4) 庄子メダル

松本 純一(産業技術総合研究所)
松本氏は、有限要素法に基づく流体解析技術開発に精力的に取り組み、浅水長波流れによる河川の氾濫解析、非圧縮性粘性流れの最適制御理論による形状最適化などの応用問題への適用を行った。また、フェーズフィールド法を用いて濡れ性や表面張力を考慮可能な大規模並列3次元気液二相流れ解析技術を開発し、マイクロスケールのインクジェットやポンプなどへの適用により、産業利用促進に大きく貢献した。さらに2次元浅水長波流れと3次元気液二相流れの双方による連結解析技術を開発し、津波解析への適用を行った。また、理事として本会の運営に精力的に尽力しており、計算工学の発展に多面的に貢献している。

(5) 論文賞

近藤 雅裕、松本 純一(産業技術総合研究所)
「高粘性非圧縮MPH 法を高速化する圧力代入型陰解法」Paper No.20210016
高粘性流体の粒子法の解析では、粘性に関する拡散数条件により、陽解法では速度増分が小さくなる一方で、陰解法では安定化のための速度増分の制約を排除できるものの計算コストが高くなるなど、実用面で課題が残されていた。本論文では、著者らがこれまでに提案してきたMPH-I 法を高速化するために新たな圧力代入型陰解法を提案し、粘性および体積弾性率が大きな材料に関しても、安定かつ高精度な解析を可能とした。提案方法は、実用面においても優れた手法である。また、押し込み成形プロセスを模擬した計算例を示しており、成形プロセスの新たなシミュレーション法としての将来性・発展性が十分に期待できる。

(6) 技術賞

角 有司、飯山 洋一(宇宙航空研究開発機構)
「品質工学ツール(JIANT)」
角、飯山両氏は、宇宙航空研究開発機構(JAXA)において、CAEと連携させてロバスト設計を行うための最適設計ツールJIANT(Jaxa Integrator for Analysis Tools)を開発してきた。JIANTは、品質工学とセットベース設計の二つの手法を融合・発展させ、多水準直交表を用いた網羅的な計算を行い、パラメータ成立範囲を算出できる点に特徴があり、非線形CAEにおいても高精度なロバスト設計解を算出できる。宇宙分野における火星衛星探査計画の着陸シミュレーションや月縦孔探査計画の地球・太陽可視解析のほか、木造建築の耐震設計への適用事例もある。JIANTは、汎用性も高く、現在のバージョンは国内の企業、研究機関、大学は無償で利用でき、10以上の団体に利用されている。今後も多方面での利活用だけではなく、計算工学の発展への貢献も期待できる。

(7) 論文奨励賞

若松 裕紀(海上保安大学校)
「コンパクトスキームと境界コンパクトスキームの組み合わせの実用的な格子間隔における格子収束性」Paper No.20210015
本論文は、差分法におけるコンパクトスキームと境界周辺用の境界コンパクトスキームの組み合わせに着目し、実用的な格子点数および格子間隔の範囲内において、組み合わせの選択が与える数値収束性を詳細に議論している。また、著者のスキーム以外の組み合わせも多数取り扱い、実用的な設定における数値テストを網羅的に実施し、収束性の傾向を体系的に取りまとめている。そして、境界近傍で高精度陽的スキームを用い、一波長あたり8点以上と設定すれば、境界近傍での数値収束性を改善できるといった具体的な方針を例示しており、今後、壁境界周辺での高精度な計算への適用など、将来性・発展性が期待できる。
松本 久也(筑波大学)
「底面境界適合型MPS 法の開発」Paper No.20210017
本論文は、底面境界適合型MPS法の相互作用モデルを包括する混合微分の定式化を導き、座標変換を利用して計算するための道筋を詳細に議論している。混合偏微分モデルは、MPS法の既存の微分作用素モデルを包括する形で導出されており、精度検証として、混合偏微分モデルおよび曲線座標系におけるラプラシアンモデルの収束性の評価、曲面状の底面を有する容器内の静水圧問題を解析し、底面境界適合型MPS法の精度評価を行い、その有用性を示している。さらに、三角形状障害物を有するダムブレイク問題を解析し、動的な問題への適用性についても検証しており、将来性・発展性が期待できる。

(8) 技術奨励賞

佐藤 崇弘(鳥取県産業技術センター)
「切削加工技術高度化支援のための実測・シミュレーション連携のCAE 環境」
佐藤氏は、高速度カメラ、サーモグラフィ、非接触変位センサ、切削動力センサなどの各種の計測・評価装置と、有限要素法に基づく数値シミュレーションを連携させた切削加工技術高度化支援のためのCAE環境を構築し、切削加工現象の実測と計算の両面からの見える化から始まる現象解明や切削技術の高度化に関して学術的かつ工学的な貢献を実施した。
古口 睦士、増田 俊輔(サイバネットシステム株式会社)
「流体問題を対象としたトポロジー最適化システムのクラウドサービスによる展開の実現」
古口、増田両氏は、リメッシュ処理を必要としない埋め込み境界法を導⼊したトポロジー最適化手法を開発し、流体問題に適用して最適構造が得られることを示した。また、両氏はトポロジー最適化の適⽤範囲を学術研究ならびに産業応⽤に対して拡張性し、開発手法を商⽤システムとしてビジネス展開した。開発システムをクラウドサービスとして提供し、ユーザーは環境に依存せず必要な時にシステムにアクセスできるという利便性を有する。

(9) 博士論文賞

郭 佳(東北大学)
「構成則誤差最小化とスパース正則化を用いた構造物の損傷同定解析」
郭氏の博士論文は、建築構造分野における建物のレジリエンス性の要請に応えるために、限られた観測情報から構造物の損傷同定を可能にすることを目的として、構成則誤差最小原理に基づく手法と、スパース正則化法の導入を提案している。これらの提案手法の有効性について既往の実験データを用いた検証を行っており、非適切問題における提案手法の有効性を緻密に検証している。また、本論文の成果は、すでに4編の学術論文として国際専門誌に受理・発刊されており、高い評価を受けている。

2020(令和2)年度贈賞者リスト

(1) 計算工学大賞

Jiun-Shyan Chen(米国カルフォルニア大学 サンディエゴ校)
Chen氏は、30年の長きにわたり、重要でかつ独創的な研究を通して計算力学分野に強い影響力を残してきた。特に、固体力学、マルチスケール材料モデリング、衝撃・ダイナミクス、メッシュフリー非線形有限要素法、物理制約下のデータ駆動型コンピューティング、マルチスケール・次元縮約解析法など、極限的な力学現象に関連した計算科学分野において極めて顕著な研究業績を有する。また、ASCE Engineering Mechanics Institute の会長、IACMのECメンバー、数々のジャーナルの編集長・共同編集者を務めており、計算工学の学術的発展への貢献度が極めて高い。

(2) 功績賞

寺田 賢二郎(東北大学)
寺田氏は、本会の黎明期より常にその運営に携わり、理事として6期、副会長、第11代会長、監事を歴任し、さらには第15・16回計算工学講演会実行委員長、IWACOM-II実行委員長、COMPSAFE2014現地事務局長、WCCM XV事務局長などを歴任した。また、IACMでは2014〜2018年には副会長(アジア・オーストラリア地区)を務め、ECメンバーとして計算工学分野の日本と世界をつなぐパイプ役としてもこの業界を力強く牽引した。常に国際的な視点から本会の運営を顧み、サマースクールなどでの後進の育成、計算工学分野の醸成にも多大なる貢献をした。
梅津 康義(株式会社JSOL)
梅津氏は、CAEベンダーとして国内製造業に向けた非線形構造解析ソフトウェアの開発、販売およびサポートを通じ、計算工学分野の一つである衝突解析や塑性加工解析などの非線形CAEの利用技術に対し、その拡充と発展に貢献してきた。2008年からは4期連続で本会の理事、その後、副会長、監事として合計6期、12年間にわたり学会運営に携わった。また、計算工学講演会の副実行委員長として「ベンダー・ユーザーセッション」を民間企業が参画しやすい形に拡充させるなど、本会の特徴を活かした講演会の発展にも多大な功績を残した。

(3) 川井メダル

大山 聖(宇宙航空研究開発機構宇宙科学研究所)
大山氏は、3次元Navier-Stokes(N-S)計算と進化アルゴリズムを用いた世界最大級の大規模並列計算を実施し、世界初の3次元翼の空力設計最適化を実現した。3次元N-S計算を用いた大域的な設計最適化はその後の世界的トレンドとなっており、同氏の研究成果は多くの文献で引用されている。その後も、設計最適化手法や数値流体力学などに関する幅広い研究分野において先進的な研究を行っており、特に設計最適化の分野では、探査効率が非常に高い実数領域適応型遺伝的アルゴリズムの開発やロバスト設計最適化手法の開発などでも多くの実績を上げた。

(4) 庄子メダル

山﨑 伯公(日本製鉄株式会社)
山﨑氏は、主に鉄鋼連続鋳造を対象にした数値解析技術とプロセス最適化の研究開発を行い、連続鋳造プロセスでの高品位・高生産性鋳造技術の発展に功績を残した。特に粒子法流動解析手法(MPS)を連続鋳造機でのスプレー水挙動解析に世界で初めて適用し、実用レベルで設備設計に適用できることを示し、粒子法の産業利用促進に大きく貢献した。また、理事として本会の運営に精力的に尽力しており、計算工学の発展に多面的に貢献している。

(5) 論文賞

外里 健太(東北大学)、小谷 拓磨(日本工営株式会社)、波多野 僚(鹿島建設株式会社)、高瀬 慎介(八戸工業大学)、森口 周二(東北大学)、寺田 賢二郎(東北大学)、大竹 雄(東北大学)
「数値解析結果の空間モード分解による津波のリスク評価」Paper No.20200003
本論文では、モード分解の技術の一つである固有値直交分解(POD)を津波リスク評価に応用したものであり、少数の数値結果のサンプルから入力変数(確率変数)と出力変数を関係付けた代理モデルを作成し、この代理モデルを使うことでモンテカルロシミュレーションによる津波のリスク評価の効率を大幅に削減している。津波時の建物に作用する津波の衝撃力のリスク評価といった実践的な例題に対しその有用性を示したものであり、実用性および有用性が高い。また、その他の災害にも転用が可能な汎用的な技術であるため、将来性・発展性が十分に期待できる内容である。

(6) 技術賞

株式会社地層科学研究所
「Geo-Graphia (ジオグラフィア:地下情報管理/可視化/解析前後処理ソフト)」
地層科学研究所により開発されたGeo-Graphiaは、地下情報の管理・解析・画像化に特化したソフトウェアであり、地下構造物や地形・地質関連情報、数値解析結果、計測結果などについて空間座標を介して関連付けることで、地下情報や知識を一元管理すること、並びに、それらを同時に3次元表示することを可能とした。地下特有の困難さを含んだ数値解析のpre/post処理のみならず、情報の統合可視化や知識化を可能としたため、土木や地盤防災、廃棄物処分等の分野への普及が急速に進んでおり、計算工学の発展に更なる貢献が期待できるソフトウェアである。
トヨタ自動車株式会社、株式会社豊田中央研究所
「バーチャル人体モデル"THUMS"」
両社が開発したモデルは、人体の形状はもとより骨の強度、皮膚の柔軟性、関節部の靭帯・腱、及び内蔵に至る人体の力学特性を詳細に再現したコンピューターモデルであり、これを車両衝突シミュレーションと組み合わせることで衝突時の人体の高精度な傷害解析を可能にした。このモデルを用いて衝突時の様々な傷害発生のメカニズムを明らかにすることで、事故解析や実車試験とあわせて車両の衝突安全性の発展に大きく貢献した。また、本モデルを2010年から公開することで、他の自動車開会社の衝突安全開発、大学での衝突安全研究にも大きく貢献した。

(7) 論文奨励賞

韓 霽珂(東北大学)
「可変正則化パラメータを用いたPhase-field 延性破壊モデル」Paper No.20182003
本論文は、Phase-Field破壊モデルによる亀裂進展解析の精度向上のために、蓄積塑性ひずみの大きさに応じて変化する可変正則化パラメータを提案したものである。提案手法による可変正則化パラメータにより、塑性域とき裂周辺の損傷域を関連づけることができ、塑性変形の影響を考慮した損傷計算を実現している。また、ベンチマーク問題の解析等の数値解析を通してき裂の進展方向を適切に予測でき、可変正則化パラメータを介して延性の制御が可能になることを例示しており、今後の破壊現象の実問題への発展など、将来性・発展性が期待できる。

(8) 技術奨励賞

久我 幹雄(株式会社ソフトウェアクレイドル)
「汎用流体解析ソフトウェア"STREAM""SCRYU/Tetra"の開発」
久我氏は、熱流体解析ソフトSTREAM のソルバー開発指導を10年以上にわたって行ってきており、中でもSCRYU/Tetra、STREAMに対するMPI並列計算プログラムの導入やソルバーに対するマルチブロック法の導入等を行い、国産ソフトウェアの海外を含めた展開を進め、日本の計算工学分野の発展に大きく寄与した。今後も、医療分野など新しい領域への様々な応用を展開していくことが期待される。

(9) 博士論文賞

相馬 悠人(茨城大学)
「破壊面の摩擦接触を考慮した損傷モデルによる鉄筋コンクリートの破壊シミュレーションに関する研究」
対象となった博士論文では、鉄筋の付着性能や破壊モードが異なるRCはりを対象とし、鉄筋のモデル化のみを変えるだけで実験と同レベルの破壊挙動を再現することを可能としている。さらに、実験と同様のひび割れ分布も3次元で再現することに成功している。土木工学分野および計算工学分野における貢献が大きく、価値のある研究成果である。

(10) 功労賞

石塚 弥生(日本計算工学会)
石塚氏は、本会の黎明期から永年にわたり本会の事務業務を行ってきた。2016年度からは事務局長として他学会との交流にも貢献しており、本会の実質的な運営を支える余人をもって代えがたい存在である。今後も引き続き、本会の健全な運営、更なる発展にご尽力いただけると幸いである。

2019(令和元)年度贈賞者リスト

(1) 計算工学大賞

Antonio Huerta(スペイン カタルーニャ工科大学)
Antonio Huerta専士は、カタルーニャ工科大学教授兼カタルーニャICREA高等研究所の所長であり、30年の長きにわたり重要でかつ独創的な研究を通して計算力学分野に貢献してきた。特に、流れの有限要素法については世界的権威として知られ、応用数学的視点から著した「Finite Element Methods for Flow Problems」は引用数が極めて多い。また、主要ジャーナルに150編近い論文を著すなど計算力学分野を牽引してきた功績によってIACMのComputational Mechanics Awardを始めとする多くの賞を受賞している。さらに、同氏は、2010年から2018年までIACMの事務局長を、また2018年からはIACMの会長を務めるなど計算力学の国際交流への貢献も大きい。

(2) 功績賞

中村 均(原子力規制庁)
中村 均氏は長年、構造解析・流体解析の汎用コード(FINAS/STAR、FINAS/CFD)を始めとする国産ソフト開発や解析技術の開発に数多く従事してきた。また、当学会の「シミュレーションの品質・信頼性にかかわる調査・研究」研究分科会(HQC分科会)において幹事として標準策定活動の立ち上げから、学会標準および解説書の執筆、普及活動に大きく貢献した。さらに、2006年度から2014年度までは当学会の理事として、WEB会員システムの導入、ニュースレター配信の立ち上げ、法人化に際しての財務処理の厳格化等の現在の学会活動の基盤構築などに貢献した。

(3) 川井メダル

和田 義孝(近畿大学)
和田 義孝氏は破壊力学シミュレーション、 AIおよび機械学習の工学応用分野で数多くの論文や書籍を著しており、日本機械学会においては計算力学技術者認定委員、日本機械学会広報・情報部会委員、 日本機械学会実行委員長を務め、2019年には日本機械学会フェローの認定を受けている。また、日本溶接協会原子力研究委員会FDF/FDF-Ⅱ小委員会において数値解析手法検討WGリーダーを担当している。当学会においても学会誌編集委員幹事、代表会員、「機械学習の工学問題適用に関する研究会」主査を務めるなど学会運営に多大の貢献をしている。

(4) 庄子メダル

高垣 昌和(公益財団法人鉄道総合技術研究所)
高垣 昌和氏は、東京大学生産技術研究所において溶融亜鉛めっきの熱応力損傷解析や、高周波焼入れ時の熱応力損傷解析手法を提案するなど、有限要素法を用いたき裂発生・進展評価法の高度化と発展に貢献した。また、現在の勤務先である公益財団法人鉄道総合研究所においては、車輪レール間の転がり接触解析手法の開発、流体解析と粒子法による着雪シミュレーション手法の開発など鉄道分野固有の現象に対する数値シミュレーションの高度化に携わってきた。本学会においても理事および「不確かさのモデリング・シミュレーション法に関する研究会」の委員を務めるなど、計算工学の発展に大きく貢献してきた。

(5) 論文賞

西野 崇行(東北大学)、加藤 準治(名古屋大学)、京谷 孝史(東北大学)
「幾何学的非線形性と荷重条件の不確かさを考慮したトポロジー最適化」Paper No.20190004
本論文は、非線形を考慮したトポロジー最適化において、荷重の不確定性を導入し、ロバスト性を向上させるためのトポロジー最適設計法を提案しており新規性が高い。論文中では2次元の数値例を示しているが今後、3次元の実用的な問題にも適用することが期待されるなど将来性・発展性も高い。
月野 誠(株式会社くいんと)
「Nitscheの方法を用いた有限被覆法における摩擦なし接触解析手法」Paper No. 20190010
本論文は、有限被覆法(FCM)による接触解析にラグランジュ乗数を導入する手法を開発しており、その独創性・新規性は高い。また、ボクセル法の接触問題の課題を根本的に解決できる可能性を示していること、FCMの採用によりボクセル法による自由度増大の対策になっている点で実用性、将来性も高い。

(6) 技術賞

登坂 博行(株式会社地圏環境テクノロジー)
登坂 博行氏は、東京大学在職中の1990年代後半に、生活圏における水問題の科学的定量的評価・対策設計を目的として、河川|の流れと地下流体流れを統合化した陸域流体・熱・汚染物質移行の統合解析技術を世界に先駆けて開発した。2000年には大学発のベンチャー企業である「株式会社地圏環境テクノロジー」を立ち上げ、開発した「統合型地圏流体シミュレータGETFLOWS」によって数多くの水問題の解析を行ってきた。この技術は、今後も台風や異常気象による災害予測・対策、福島の地下水汚染問題や高レベル廃棄物処分など難題への応用が期待される。

(7) 論文奨励賞

佐藤 兼太(東北大学)
「Level Set 法と PLIC-VOF 法のカップリングによる格子ボルツマン法の3 次元自由表面流れ解析モデルの構築」Paper No.20182003
本論文は、格子ボルツマン法(LBM)による自由表面流れ解析モデルにPLlC-VOF法を採用して流れ解析の高度化を提案しており、新規性が高い。提案手法の検証がダムブレイク問題で示されており津波シミュレーションなどに適用可能なことから実用性、有用性が認められる。また、完全に陽的な計算が可能であり大規模並列解析向きであることから将来性、発展性が期待できる。

(8) 博士論文賞

倉石 孝(早稲田大学)
「Space-Time Computational Analysis of Tire Aerodynamics with Actual Geometry, Road Contact,Tire Deformation and Fluid Friction」
本博士論文は、回転、接触、変形などの複雑現象を伴うタイヤ周りの流れについて、Space-Time Isogeometric Analysis(ST-IGA)法を用いた計算方法が提案されている。回転や路面との接触などを伴う実形状タイヤの3次元流れ計算を可能にしたこと、接触部の薄い境界層の解析を効率的に解くことに成功しているなどの点から研究の実用性、独創性を高く評価できる。

2018年度贈賞者リスト

(1) 計算工学大賞

Jacob Fish(米国コロンビア大学)
Fish 氏は、アダプティブ重合メッシュ有限要素法(s-FEM)、マルチグリッド・マルチスケール法、次元縮約均質化法、時空間マルチスケール・マルチフィジックス解析法など、マルチスケール計算科学に関する研究を中心に重要でかつ独創的な研究を長期にわたり行ってきた。氏の著書「A First Course in Finite Elements」は日本語にも翻訳され、多くの研究者、技術者に読まれている。また、USACMでは2002年から2期会長を務めたほか、2018年8月からはIACMの副会長(アメリカ地区)を務めるなど計算工学の発展に対する貢献は極めて大きい。

(2) 功績賞

吉田 有一郎(東芝インフォメーションシステムズ株式会社)
吉田氏は、現在のHQC研究会、その前身であるHQC分科会において工学シミュレーションの品質向上の活動に精力的に取り組み、学会標準事例集の改定・発行にも大きく貢献した。学会標準事例集は延べ1200部以上販売されており、産業界、学界の工学シミュレーションの品質向上への業績が大きい。また、HQCに関するパネル討論や講習会に数多く参加し、本会が工学シミュレーションの品質向上に先駆的に取り組み、産業界、学界に強く寄与してきたことを広く周知させた。

(3) 川井メダル

坪倉 誠(神戸大学)
坪倉氏は、乱流解析技術の一つであるラージエディシミュレーションとその応用、特に最先端のスパコンを活用した超並列流体シミュレーションの研究開発に大きな実績を挙げおり、地球シミュレータや京コンビュータを活用した世界最大規模の自動車空力シミュレーションでは、風洞実験に匹敵する精度での空力予測や、風洞実験では予測が困難な非定常空力予測を実現した。また、超並列環境下での流体・構造強連成問題のシミュレーション手法の研究開発についても多くの実績を上げた。

(4) 庄子メダル

藤川 智士(マツダ株式会社)
藤川氏は、自動車におけるNVH(騒音・振動・ハーシュネス)およびパワートレインの分野の技術開発に従事し、特にモデルベース設計を最大限に活用した設計・開発手法を実現して自動車の環境性能の向上、開発効率の向上に大きく貢献した。また、学会等においても計算技術に関する研究会の運営に積極的に参加し、若手育成や技術向上に貢献している。

(5) 論文賞

田中 真人(豊田中央研究所)、笹川 崇(豊田中央研究所)、表 竜二(豊田中央研究所)、藤井 文夫(岐阜大)
「超双対数を用いた2-mode漸近展開法と有限要素座屈解析への応用」Paper No. 20170017
本論文は、著者らにより提案された後座屈解析を必要としない新たな分岐座屈手法として、超双対数の使用を前提とした2-mode漸近展開法を構築しており、独創性・新規性が高い。提案手法を非線形有限要素法プログラムに実装し、その方法を詳細に記述し、実装方法も提案しており、実用性・有用性も高い。
松下 真太郎(東京工業大学)、青木 尊之(東京工業大学)
「木構造に基づいたAMR法を用いた流束項付き保存形フェーズフィールド方程式のマルチモーメント法による解法」Paper No. 20180005
本論文は、混相流の界面追跡を行うことを前提として、マルチモーメント法のIDO法を用いて保存形Allen-Cahn方程式を解くと共に、AMR法に適合性の高い手法を開発し実装している。高精度かつ解析自由度を押さえた計算によって、従来手法と比較し計算時間を大幅に短縮しており独創性・実用性・有用性が高い。

(6) 技術賞

瀧澤 英男(日本工業大学)、寺嶋 隆史(株式会社明治ゴム化成)
両氏は、特定非営利活動法人非線形CAE協会の材料モデリング分科会において、商用の汎用有限要素解析コードに様々な非線形材料モデルを組み込みためのライブラリを提案してきた。開発したサブルーチンライブラリは、金属を対象とした異方性降伏関数を組み込むUMMDpと超弾性・粘弾性・ダメージモデルを組み込むUMMDrとして一般に公開されており有用性が高い。ライブラリの開発をとおして参画した多くの製造業の解析技術者にCAEの勉強の場を提供している点でも計算工学への貢献は大きい。

(7) 論文奨励賞

関根 章裕(東京大学)
「粒子法を用いた燃料ノズル内のキャビテーションを伴う流動解析」 Paper No. 20170013
本論文は粒子法(MPS法)における不安定性とパラメータ依存性を改善したキャビテーションモデルの提案しており、新規性が高い。また、エンジン効率に影響を与えるノズル噴孔内部に発生するキャビテーションの解明など実現象を再現するという側面から、実用性、有用性も高い。
生野 達大(東京大学)
「ウォームスタート付き内点法に基づく大変形接触解析手法」 Paper No. 20180009
本論文は、有限変形を伴う摩擦無し接触問題に対して収束性を向上する手法を提案している。大変形等いくつかの適用例を示し、収束性の改善の検証も行い、優位性が示されている。また、大ひずみを伴う問題にも対しても有用性が示されており、適用範囲は広く、新規性、有用性、発展性が高い。

(8) 博士論文賞

松原 成志朗(東北大学)
「熱可塑性樹脂の材料構成則と増分ポテンシャル法に基づく熱・機械強連成解析手法の開発」
対象となった博士学位論文は、非晶性熱可塑性樹脂、およびこれを母材とする繊維強化熱可塑性樹脂(FRTP)からなる構造物の変形強度特性を評価するための材料構成則とこれに基づく熱・機械強連成解析手法を開発しており、世界的に注目されつつある増分ポテンシャル法を国内で先駆的に導入するなど独創性が高く今後の発展も期待できる。

2017年度贈賞者リスト

(1) 功績賞

越塚 誠一(東京大学)
越塚氏は、数値流体力学および計算工学分野の研究に従事し、独自の粒子法であるMoving Particle Semi-implicit(MPS)法を考案、幅広い分野に適用し、多くの成果を挙げてきた。また、同氏は本会に設置されたシミュレーションの品質保証に関する研究分科会、研究会の副主査あるいは主査として、この分野を牽引してきた。さらに、同氏は2006年度から2011年度まで理事、2012-2013年度には副会長、2014-2015年度には会長、2016-2017年度には幹事を務め、学会の運営と発展に大きく寄与した。
角 洋一(横浜国立大学・放送大学)
角氏は、破壊力学への計算力学の適用において先駆的な研究を行い、有限要素法による3次元破壊力学解析および脆性き裂伝播のシミュレーションについて顕著な功績を残してきた。また、同氏は本会の設立から創成期における学会運営に尽力され、第1回から第5回までの計算工学講演会実行委員を務めるなど学会の基盤形成と発展に大きく貢献した。

(2) 川井メダル

長谷川 浩志(芝浦工業大学)
長谷川氏は、企業在籍時は最適化技術の産業界への普及に貢献するとともに、大学移籍後は設計論、システムズエンジニアリングへ研究分野を広げ、関連した論文35編以上、書籍を5冊出版している。また、本会に設置されたシミュレーションの品質保証に関わる研究分科会、研究会において委員、幹事としてシステムエンジニアリングの観点からこの分野を牽引してきた。さらに、本会では2016年度から理事を務め、学会の運営にも尽力している。

(3) 庄子メダル

櫻庭 雅明(日本工営株式会社)
櫻庭氏は、建設コンサルタントにおいて河川や海岸等の解析技術の研究および実務に従事し、実用的な自由表面問題の有限要素法に基づくシミュレーション技術を開発するなど、建設分野における防災シミュレーションの高度化と発展に寄与した。また、本会の「多元災害研究会」の副主査として精力的に活動し、この分野の計算工学の進展に貢献している。

(4) 論文賞

島崎 紗緒里(トヨタ自動車株式会社)、長嶋 利夫(上智大学)
「結合力モデルを用いた準三次元XFEMによるCFRP積層板の損傷進展解析」Paper No.20170008
本論文は、準3次元XFEMとZig-zag CZMによる新しい解析手法を提案し、CFRP積層試験片の損傷進展解析に適用したものである。提案された手法については、理論解との比較により検証されるとともに、実用性、有用性も示されている。提案された手法は、今後、実用的CFRP積層構造に適用も期待されるものであり、将来性・発展性が高く評価された。
山口 裕矢(東北大学)、高瀬 慎介(八戸工業大学)、森口 周二(東北大学)、小田 憲一(日本大学)、上石 勲(防災科学技術研究所)
「非ニュートン流体モデルを用いた雪崩の3次元非構造有限要素解析」 Paper No.20170011
本論文は、雪崩の3次元流動問題を混相流としてモデル化、自由表面を考慮した有限要素法に基づく非構造メッシュを用いた数値シミュレーション手法を提案したものである。提案された手法は、模型実験との比較により妥当性の確認が行われており、実用性、有用性が高く評価できるとともに将来性が期待される。

(5) 技術賞

久芳 将之(株式会社ソフトウェアクレイドル)
久芳氏は、素材メーカー、コンサルティング会社を経て2002年に熱流体解析ソフトウェアの国内開発ベンダーである株式会社ソフトウェアクレイドルに入社し、技術サポート、技術部部長を経て2014年代表取締役社長に就任した。同氏は、ユーザーとしてソフトウェアを利用してきた経験を生かし、汎用流体解析ソフトウェアである「STREAM」「SCRYU/Tetra」「scFLOW」の開発、改良、サポートに従事し、国産の先端的ソフトウェアの海外を含めた展開を進め、日本の計算工学分野の発展に大きく寄与した。

(6) 論文奨励賞

中居 寛明(株式会社IHI)
「高圧ガスパイプラインにおける高速延性破壊の流体-構造-破壊連成一次元モデル -モデル構築 (第1報)-」 Paper No.20160003
本論文は、高圧ガスパイプラインにおける高速延性破壊時に関連するパイプ内のガスの減圧、パイプ内の変形および亀裂伝搬の相互作用を記述する流体-構造-破壊連成一次元モデルを新たに理論的に導出したものであり、独創性・新規性が高く評価できる。さらに、開発された手法は高速かつ高精度なものであり、大規模な実設計問題への展開が可能であることから、実用性・発展性も大きく期待できる。
西 紳之介(東北大学)
「熱変形制御を目的とする複合板のマルチスケールトポロジー最適化」 Paper No.20160024
本論文は、面内に周期的な不均質性を有する複合板において、マクロな熱変形を制御するミクロ構造の形態・形状を決定するマルチスケールトポロジー最適化の手法を提案したものである。提案された定式化は大たわみを考慮した板理論によるものであり、その新規性が高く評価されるとともに、実用性についても期待できる。

(7) 博士論文賞

新宅 勇一(東北大学)
「一般化結合力モデルと結合力埋込型損傷構成則を用いたシームレスき裂進展解析手法の開発」
対象となった博士学位論文は、多種多様な破壊現象を表現可能な一般化結合力モデルを材料構成則として考慮した結合力埋め込み型損傷モデルを提案し、破壊の初期段階からき裂面が完全に形成される破壊の最終段階までを一貫して取り扱うことのできる数理モデルと計算アルゴリズムを提案したものであり、独創性とともに有用性が期待される手法を論じたものとして高く評価できる。
三目 直登(東京大学)
「Integrated Coupled Simulation for Multi-scale and Multi-physics Tsunami Analysis」
対象となった博士学位論文は、流体と構造物の連成現象を海洋から沿岸域を通過し陸地に押し寄せる津波のマルチスケール性を含めて取り扱うことが可能な数理モデルとその並列計算アルゴリズムを提案したものである。論文では、検証と妥当性確認により提案手法の信頼性も示され、数理から並列実装までの幅広い内容に関して高いレベルで論じたものとして高く評価できる。
山本 剛大(横浜国立大学)
「厚肉構造に対応したシェル要素による数値解析」
対象となった博士学位論文は、塑性変形に伴う大ひずみを考慮するため、板厚方向の変位自由度を付加した新しいシェル要素を提案するとともに、シェル要素では考慮できない局所的な変形をソリッド要素取り扱うためのシェル要素とソリッド要素を接合する手法を論じたものであり、計算力学分野の基盤技術を扱ったものとして高く評価できる。

(8) 功労賞

上田 真稔(元 株式会社竹中工務店)
上田氏は、本会の立ち上げのために設置された日本計算工学会設立準備会委員会の産業界からの委員として参画し、本会の大きな特徴である産業界を重視した運営形態を主導された功労者の一人である。本会発足後も、理事として、設立時の会員の増員に向けた活動や特別会員の増強に尽力され、本会の安定した会員組織の基盤を構築した功績は顕著である。
大崎 俊彦(株式会社先端力学シミュレーション研究所)
大崎氏は、本会の立ち上げのために設置された日本計算工学会設立準備会の産業界からの委員として加わるとともに、本会の発足後も理事として運営、発展に貢献された。また、プロジェクト研究委員会の責任者として政府機関との協力した研究開発を推進し、我が国の計算工学分野の基盤を強化するとともに、本会の産官学融合の方向性を示した功績は顕著である。

2016年度贈賞者リスト

(1) 計算工学大賞

Charbel Farhat(米国スタンフォード大学)
Farhat氏は、長年、数値流体力学および大規模計算の多岐にわたる研究分野において数多くの研究成果を残してきた。特に領域分割型並列連立1次方程式解法 FETIや移動格子流体計算における離散幾何学的保存則等の先駆的かつ基盤的な研究は、大規模計算および流体−構造連成解析の発展および実用化を進めるものとして高く評価されている。また、280編を越える査読付き論文、30以上の著書の執筆、分担を行うとともに、国際計算力学連合(IACM)等の役員や伝統ある学術誌International Journal for Numerical Methods in Engineeringの責任編集者を務めるなど、計算工学分野の世界的な学術的発展への貢献が顕著である。

(2) 功績賞

都井 裕(東京大学)
都井氏は、計算固体力学分野において、構造挙動と材料挙動を中心とする非線形問題を対象として、有限要素法、メッシュレス法、メゾ解析手法等の数値計算手法の開発と工業設計・先端テクノロジーへの応用に関する研究で成果を残してきた。また、同氏は本会の設立から創成期における学会運営に尽力され、1998年度から2008年度まで理事を務めた。特に財務担当理事としての学会の財政基盤確立に対する貢献は顕著であり、学会の発展に大きく寄与した。
姫野 龍太郎(理化学研究所)
姫野氏は、数値流体力学、ハイパフォーマンスコンピューティング、ライフサイエンス・医工学分野のソフトウェア開発・普及、マルチスケール/マルチフィジックス問題の数値解法等、多くの計算力学的研究に携わり、さまざまな成果を残してきた。特に、「京」コンピュータとその関連アプリケーションソフトウエア開発では、指導的立場からそれらの開発を成功に導いた。また、本会では2006年から2010年までは理事、2008、2009年度には副会長を務め、学会の発展に大きく寄与した。

(3) 川井メダル

塩谷 隆二(東洋大学)
塩谷氏は、大規模並列有限要素法、ハイパフォーマンスコンピューティング分野の研究の第一人者であり、関連した論文40編以上、書籍を8冊出版している。特に、日本学術振興会未来開拓学術事業の採択課題幹事、地球シミュレータ利用プロジェクト、JST CRESTの研究代表者として、継続的に最先端のスーパーコンピュータを利用した汎用並列有限要素法システムの開発及び公開に寄与してきた。また、本会では2016年度から理事を務め、学会の運営にも尽力している。

(4) 庄子メダル

櫻井 英行(清水建設株式会社)
櫻井氏は、造船会社に入社後からCAEに関する新規事業の立ち上げに携わり、現在の所属に移籍後は放射性廃棄物処分に関する研究開発に従事し、CAEを活用し多大な業績を上げた。特に地下水流動解析の研究においてメッシュフリー法を適用し、メッシュを活用した独創的かつ実用性の高い研究を行い、多数の優れた成果をあげてきた。近年は、土木分野を中心とした計算品質の向上(HQC、 V&V)の活動を牽引するとともに、2016年度から本会の理事を務め、学会の活動、運営にも大きく貢献している。

(5) 論文賞

松永 拓也、柴田 和也、室谷 浩平、越塚 誠一(東京大学)
「ミラー粒子境界表現を用いたMPS法による流体シミュレーション」Paper No.201640002
本論文は、MPS法による2次元流体シミュレーションのためのミラー粒子境界表現法の構築及び検証を行ったものである。従来の手法におけるシンプルなアルゴリズムは維持しつつ、境界条件取り扱いにおける課題を克服した新規性とともに、安定化のための係数の具体的な数値やミラー粒子生成アルゴリズムを提案するなどの実用性も示されている。今後、この方法の有効性に期待が持て、将来性・発展性を大きく期待できる。
新宅 勇一(筑波大学)
「結合力を埋め込んだ弾性損傷モデルの構築とそのき裂進展解析への適用」Paper No.20160011
本論文は、結合力モデルを材料構成則として考慮した結合力埋め込み型損傷モデルを提案し、き裂進展解析に適用したものである。独創的なモデル化に加え、具体的な計算アルゴリズムも提示されており有用性も高い。さらに、任意の結合力モデルに適用可能な形で定式化されており、将来性・発展性を大きく期待できる。

(6) 技術賞

立石 勝(株式会社テクノスター)
立石氏は、造船会社や世界的に著名なCAEソフトウエアベンダーでの業務経験を生かし、2002年に株式会社テクノスターを設立し、CAEユーザーの立場に立った利用価値の高いソフトウェアを開発・販売してきた。特に国産初汎用プリ・ポストプロセッサ「TSV-Pre/Post」や次世代の汎用構造解析環境を目指した「Jupiter」プラットフォームは、製造業の製品開発力強化に大きく貢献できるCAEソフトウェアとして高く評価されており、計算工学分野における希有な国産ソフトウェアベンダーを主導することで、日本の計算工学分野の発展に大きく寄与した。

(7) 論文奨励賞

荻野 正雄(名古屋大学)
「高周波電磁界シミュレーションにおける複素対称行列向け反復法の性能評価」Paper No.20140017
本論文は、高周波電磁場問題で現れる複素対称行列を対象とした連立1次方程式の求解法として、最小残差法を複素対称問題に適用できるように拡張した新たな反復法を提案し、その有効性を定量的に評価したものである。また、反復型部分構造法による並列アルゴリズムも合わせて提案しており、実用性も高く、将来性を大きく期待できる。
陳 曦(横浜国立大学)
「非正規分布の形状不確定性を考慮した確率有限要素法による構造解析手法の開発」Paper No.20160019
本論文は、多項式カオス展開法による確率分布に対する近似応答曲面を用いて、非正規確率分布に従う形状不確定性を考慮した確率有限要素法を構築したものである。近年、不確定性の定量化(UQ)において再び注目されている確率有限要素法に関する研究として、独創性、新規性とともに実用性、有用性も高く評価できるものであり、将来性も期待できる。

(8) 功労賞

菊地 厖(数値解析開発株式会社)
菊地氏は、本会の立ち上げに当たって設けられた日本計算工学会設立準備会に産業界の代表として加わり、本会の大きな特徴である産学官協力による運営形態を主導された功労者の一人である。本会発足後も、学術研究の産業利用を活性化や計算力学教育に関する計算工学講演会オーガナイズドセッションの企画、20周年記念出版事業の取りまとめ等の様々な本会の活動を通して産業界からの学会支援に尽力されており、本会の設立と発展、計算力学分野の人材育成に対する貢献は顕著である。

2015年度贈賞者リスト

(1)功績賞

樫山 和男(中央大学 理工学部)
樫山氏は長年、数値流体力学分野における有限要素法の開発に携わり、特に防災・環境問題のシミュレーション手法の開発で成果を残してきた。また最近ではバーチャルリアリティ技術に基づく可視化・可聴化などの計算力学における新しい分野への応用研究も進めており、計算工学の発展に貢献している。また、本学会の設立当初から評議員、2002、2013年度まで理事、2014、2015年度は監事を務めた。そして2010、2011年度には副会長として、2012、2013年度には会長として学会の運営に尽力した。2008、2009年度には計算工学講演会の実行委員長も努めており、計算工学分野の学術研究の発展に大きく寄与した。
山村 和人(新日鐵住金株式会社)
山村氏は、製鉄プロセスおよび設備の研究開発・エンジニアリングにおいて計算工学の実用化を図ってきた。特に数理最適化手法、不連続体構造解析法などを中心に研究開発を進めてきたほか、計算工学の人材育成にも第一線で取り組んできた。また、同氏は本学会設立時からの会員であり、2008〜2011年度に理事、2012、2013年度は副会長、2014、2015年度は監事を務めた。その間の同氏の貢献は、シニア会員・研究室会員・フェロー会員の新設、2015年度より新たに開始された研究会の規約の制定、ものづくりのための計算工学研究会の運営、20周年記念行事の一環としての川井忠彦先生の著書の出版とその講習会の開催、倫理綱領の策定など多岐にわたる。

(2)川井メダル

渡邉 浩志(エムエスシーソフトウエア株式会社 テクニカルサポート部)
渡邉氏は、非線形有限要素法、バイオメカニクス分野の研究の第一人者であり、関連した論文を20編以上,書籍を1冊出版している。特に、同氏が東京大学在籍中に開発に携わった「マルチスケールマルチフィジックス心臓シミュレータ」のための流体構造連成解析手法は大きな注目を集めた。また、同氏は、講義資料やサンプルプログラムをインターネット上で公開したり、計算工学教育に関する研究会の幹事を務めたりするなど、教育にも大きく貢献した。さらに、同氏は2004年から学会誌編集委員、2009年から講演会実行委員を務め、第20、21回計算工学講演会では実行委員長として学会の運営にも大きく貢献している。

(3)庄子メダル

秋葉 博(東京大学地震研究所)
秋葉氏は,1997年から2002年に株式会社アライドエンジニアリング社長としてADVENTUREシステムの開発に携わるとともに、これをCAEソフトウェアADVENTUREClusterとして商用化し普及させた。このソフトウェアは国内すべての自動車会社に採用され、自動車部品、エレクトロニクス、重工、鉄鋼・素材の各メーカーにも支持され、産業界に広く導入されるに至った。同氏は、本ソフトウェアなどに関する合わせて120編あまりの論文・著書を著したほか、3件の特許を有しており、計算工学分野の研究成果の産業応用に大きく貢献した。

(4)論文賞

加藤 準治、干場 大也、高瀬 慎介、寺田 賢二郎、京谷 孝史(東北大学)
「弾塑性複合材料のトポロジー最適化における解析的感度の精度検証」Paper No.20140012
本論文は、弾塑性FEMをベースに新しい高精度な感度解析手法を定式化するとともに、塑性変形を考慮したトポロジー最適化を構築している。そして、ダクタリティを目的関数とした場合の感度導出法も新たに検討し、その検証を行うとともに幾つかの設計問題に対して最適構造を求め、その方法論を検証している。今後、この方法の有効性に期待が持て、将来性・発展性を大きく期待できる。
白山 晋、越前谷 直之(東京大学)
「複雑ネットワーク科学の観点からの分散型電源の最適配置に関する研究」Paper No.20150006
本論文は、複雑ネットワークの観点から、効率性と耐障害性を向上可能な電力網の分散型電源を配置する方法を新しく構築している。また、計算工学的な立場からも、複雑ネットワーク科学による電力ネットワーク問題に挑むことに独創性が見られる。実用性の高いアプローチを提案しただけでなく、学術的にも高い価値を付与しており、有効性・将来性・発展性の点でその取り組みが評価される。

(5)技術賞

山田 隆(株式会社JSOL)
山田氏は、長年にわたって汎用電磁界ソフトウェア「JMAG」の開発・販売等に従事し、日本発の電磁界CAEを築き上げ、かつグローバル展開を実現した数少ない人物の一人である。早期から3次元の辺要素を取り入れ、常にユーザーの目線で解析システムの利便性を追求するなど、技術面はもとより「JMAG」というパッケージ製品を通して、電気機器の設計・開発者や多くのCAE関係者に貢献している。
山本 晃司(サイバネットシステム株式会社)
山本氏は、サイバネットシステム株式会社の開発した均質化法に基づくマルチスケール解析ソフト「Multiscale.Sim®」の開発責任者であり、その市場化に対して多大な貢献を果たした。このソフトウェアは、2008年に汎用FEMソフトウェアであるANSYS®のアドインツールとしてリリースされ、既に多くのユーザーを獲得している。同氏は、GUIの整備をはじめ、プリ・ポスト機能を整備するなど、開発全般において大いに貢献した。

(6)論文奨励賞

出川 智啓(長岡技術科学大学)
「漸化式によるVortex-in-Cell法の渦要素-格子補間の高速化とその誤差評価」Paper No.20150003
本論文はVIC法を高速化する目的で、ガウス分布の漸化式表現を導入しており、計算手法として新規性があるだけでなく、計算時間は約3割削減されていることから有用性も評価できる。また、提案手法について詳細な検証を重ねており信頼性も高い。
山本 剛大(横浜国立大学)
「板厚変化を考慮したシェル要素の開発」Paper No.20150004
本論文は、塑性加工問題に適用できる構造要素の開発という計算力学分野の根幹をなす研究に挑んでおり、その姿勢が大いに評価できる。塑性変形を考慮することができれば、極めて有用性は高く、将来性が大きく期待される。

(7) 博士論文賞

遊佐 泰紀(東京理科大学)
「分離型連成解法による大規模非線形破壊力学シミュレーションの効率化」[2015年3月、博士(工学)])
本博士論文は、大規模構造物を対象としてローカル領域とそれ以外の大きな自由度を有するグローバル領域に分離してき裂近傍シミュレーションを行う数値解析手法を提案したものであり、関連した論文4編は国際ジャーナルに掲載されている。国際的視点を持って研究に臨むその姿勢は、次代を担う人材として更なる発展と計算工学への貢献が大いに期待される。

2014年度贈賞者リスト

(1)計算工学大賞

René de Borst(英国グラスゴー大学)
Borst氏は、有限要素法、損傷破壊解析、アイソジオメトリック解析、フェーズフィールド法、多孔質材料、マルチスケール・フィジックス解析などの分野で多大な功績をあげ、200以上の学術論文や12冊の書籍を著すなど、計算工学に関する最先端学術研究を世界に発信してきた。特に、破壊や損傷のモデルを組み込んだ非線形有限要素法の確立に果たした役割は顕著である。また、計算工学分野において最も歴史が古く由緒正しい国際誌であるInternational Journal for Numerical Methods in Engineeringの編集責任者をはじめとして、多くの学術雑誌の編集に携わってきた。さらに、IACM計算力学賞やIACMフェローなど、主要な賞を受賞しており、計算工学の発展に貢献した功績は極めて大きい。

(2)功績賞

奥田 基(富士通株式会社)
奥田氏は、原子核工学及びコンピュータ科学を専門に、スーパーコンピュータを利用したシミュレーションの研究開発等に多くの成果をあげてきた。緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム(SPEEDI)などの開発に携わった後に、日本初の本格的な並列処理研究施設であった富士通並列処理研究センターをアプリ側責任者として立ち上げ、計算工学分野の並列処理の研究に大きく貢献した。また、グリッド技術について日本のアカデミネットワーク上で実用化を行うべく、ITBL、NAGEGI、VIZGRIDなどのプロジェクトの企画を行い、開発側リーダーとしてこれらを完成させ、現在のHPCI計算基盤の先駆けであるグリッドシステムの実現に貢献した。

(3)川井メダル

磯部 大吾郎(筑波大学)
磯部氏は、建築物の大規模崩壊挙動の数値解析を専門とし、その関連の学術論文を60編以上、4冊の書籍を著している。同氏が開発したASI-Gauss法を用いて、2001年のニューヨーク世界貿易センタービルの崩壊解析を実施し、その倒壊メカニズムを明らかにすることで、以降の高層建築物の設計に多大な影響を及ぼした。また、1985年のメキシコ地震や2011年のニュージーランド地震において倒壊した建物の崩壊要因究明に関わる研究成果を広く社会に公表してきた功績が評価され、平成25年度には市村学術賞貢献賞(新技術開発財団)を受賞している。同氏は2012年から日本計算工学会の理事として活躍しており、学会の運営よび計算工学の発展にも大きく貢献している。

(4)庄子メダル

吉田 有一郎(東芝インフォメーションシステムズ株式会社)
吉田氏は、大学に勤めていた時期に非線形破壊力学の分野において優れた研究成果をあげるとともに、スーパーコンピューティングの技法に関する基礎的研究を通して超並列計算技法の発展に大きく貢献した。また、東芝においてCAEの普及活動および品質保証に長年携わってきただけでなく、その経験を踏まえて、日本計算工学会ではHQC分科会の幹事を務め、工学シミュレーションの品質マネジメントに関する標準の作成に際して指導的役割を果たし、わが国のCAE・産業全体に大きく貢献している。さらに、日本機械学会の計算力学の資格認定制度においても当初から現在に至るまで継続して貢献し、とりわけNAFEMSとの相互認証を実現した功績は特筆に価する。

(5)論文賞

岡澤 重信、西口 浩司、田中 智行(広島大学)
「自由移動境界を有するボクセル固体流体連成解析」Paper No.20140011
本論文は、Euler型FEMにPiecewise Linear Interface Calculation( PLIC)法を応用したものであり、新たな固体流体連成解析法について基礎方程式より丁寧に導出している。例示された数値解析例は準三次元問題であるが、二次精度風上差分よりも高精度の結果が得られており、今後の発展が期待される。
山崎 伯公(新日鐵住金(株))
「MPS法による鉄鋼連続鋳造のスプレー水挙動解析」Paper No.20140016
本論文では、MPSの優れた応用例が示されており、計算対象に適したMPS法の有効性について解析事例を通して議論している。適用内容が実用的・現実的であるだけでなく、最適化への応用にも言及されている。提示されたアプローチは、極めて実用性および有用性が高く、将来の発展が大きく期待できる。

(6)技術賞

小林 卓哉(株式会社メカニカルデザイン)
小林 卓哉氏は、汎用有限要素法ソフトウェアを用いた非線形構造解析に関する技術を、国内の企業に向けて普及させる活動を続けてきた。特に、材料非線形に関する分野において、超弾性、粘弾性の解析技術を、実験による材料定数同定および検証試験を含めて、実際の設計に適用できる手順として確立した貢献は大きい。開発された材料同定用のソフトウェアはこれらの解析を行う企業においてほぼ必須のツールになっている。また、特定非営利活動法人・非線形CAE協会の創設以来、事務局長として会を牽引し、我が国のCAEを発展させてきた功績は大きい。
石井 惠三、月野 誠(株式会社くいんと)
石井 惠三氏は、自社の創業以来、CAEソフトウェアの分野で独自のソフトウェアを自社開発してきた。トポロジー最適化ソフトウェア「OPTISHAPE」は、利用者に軽量かつ高剛性を持つ形態を示す世界初のソフトウェアとしてその今日の市場を創出した。また、月野 誠氏は、イメージベースCAEソフトウェア「VOXELCON」を開発し、CTスキャナ等の画像を元にした現物からのモデリング機能、有限要素法による解析機能、CADデータと現物の比較や寸法計測など、様々な応用分野を示した。いずれのソフトウェアも新しい市場を拓いたばかりでなく、その後も著名 な研究者の研究成果を加えながら発展を続けており、その応用が多くの製造業の製品開発に貢献している。

(7)論文奨励賞

車谷 麻緒(茨城大学)
「破壊シミュレーションのための構造要素を用いた離散体解析法」Paper No.20130010
本論文は、破壊現象の数値解析方法として、離散構造要素である梁要素を用いた方法を提案しており、コンクリートやセラミクス材料のような、マイクロクラック発生と軟化による材料破壊の進む問題に対する有効性が示されている。今後、三次元問題やより複雑な挙動を示す非均質材料への拡張など、発展・将来性を大きく期待できる。
菊地 貴博(武蔵野赤十字病院)
「壁境界条件としてペナルティ法を導入したHamiltonian MPS法による超弾性体モデルの単軸圧縮シミュレーション」Paper No.20140010
本論文は、計算工学の医療応用の一つを例示するもので、超弾性体モデルを実装したHamiltonian MPS法により、嚥下を模擬するための数値シミュレーションを行っている。ゼリー食品の圧縮試験との比較も行っており、塑性加工問題への応用等も期待される。提示されている手法の有用性は高く、将来性を大きく期待できる。

2013年度贈賞者リスト

(1)計算工学大賞

Wing Kam Liu(米国ノースウェスタン大学)
Wing Kam Liu氏は、計算固体力学の多岐にわたる研究分野において長年にわたって数多くの研究成果を残してきた。特に、(a)高精度のシェル要素の開発、ALE法や確率有限要素法の開発、(b)陰的/陽的動解法における時間積分アルゴリズムの開発、(c)大変形にも対応可能で高精度なRKPMと呼ばれるメッシュフリー法の開発、(d)量子と分子の力学挙動をつなぐマルチスケール法の開発とナノ粒子設計法の開発など、先駆的な研究を発信し続けている。また、米国アカデミーTAM委員会副委員長(2014年から委員長)、国際計算力学連合(IACM)副会長、第7回国際計算力学会議(WCCM)議長などを歴任しており、計算工学の学術的発展への貢献が著しい。

(2)功績賞

大富 浩一((株)東芝)
大富氏は、機械力学、音響工学、設計工学を専門にCAEの発展に寄与し、原子力発電所や宇宙ステーションにおける機械システムの開発、CAD, CG, VRの研究開発等において多くの成果を出してきた。また、日本計算工学会においては2008年より副会長を、2010年からは会長を歴任し、組織のオープン化をベースに学会の基盤強化を行い、その後も監事として学会の運営・発展に尽力した。さらに、「ものづくりのための計算工学」研究会をスタートさせ、「HQC研究分科会」を通して学会初の標準書を発刊するなど、学会の新たなトレンドの定着に大きく寄与した。
新宮 清志(日本大学)
新宮氏は、日本計算工学会の前身である計算工学研究会時代から今日に至るまで、計算工学の発展および本学会の運営発展に著しい貢献をされてきた。特に、「ファジィ理論とその応用に関する基礎・調査研究」主査(1993-1994年度)、「人工生命理論と構造工学への応用に関する基礎研究」主査(1994年度)、「ファジィ・人工生命等の知的システムに関する調査・研究」主査(1995-1997年度)、「シェル・空間構造の免震・制振に関する研究開発」主査(1996-1998年度)、「ソフトコンピューティングに関する調査・研究」主査(1998-2010年度)として、産学連携に多大な貢献をした。また、計算工学講演会の第1回から第19回まで継続してオーガナイザー・座長を務めた。

(3)川井メダル

寺田 賢二郎(東北大学)
寺田氏の均質化法に関する研究は世界的にも評価されており、日本計算工学会からも「均質化法入門」(丸善)を出版し、研究成果の普及に努めている。マルチスケール解析に関する研究業績は相当数に上り、最近では、コンクリート材料の強度発現機構に対する非均質性の影響に関する研究、固体酸化物形燃料電池の強度・劣化予測手法の開発、マルチスケールCAEソフトウェアの開発に取り組んでいる。こうした研究に対して、2003年と2007年には日本計算工学会論文賞を受賞している。また、2006年から本学会の理事を務めており、講演会や国際関係を中心として本学会の運営にも尽力している。

(4)庄子メダル

中村 均(伊藤忠テクノソリューションズ(株))
中村氏は、日本の科学・工学ソフトウェア業界のリーダの1人として、国産ソフトウェアの開発、解析技術の開発、人材育成に尽力してきた。特に、構造解析・流体解析汎用コード(FINAS/STAR, FINAS/CFD)、超音波探傷コード(COMWAVE)、地震波解析コード(GEOWAVE)の開発に携わり、破壊力学解析ソフトウェア(CRACK-FEM)の開発では2013年に日本計算工学会技術賞を受賞した。HQC研究分科会の2009年の設立当初から幹事を務め、V&Vの標準策定活動から普及活動まで多大な貢献がある。2006年より本学会の理事を務め、学会の運営にも尽力した。

(5)論文賞

車谷 麻緒(茨城大学)、寺田 賢二郎、加藤 準治、京谷 孝史(東北大学)、樫山 和夫(中央大学)
「コンクリートの破壊力学に基づく等方性損傷モデルの定式化とその性能評価」日本計算工学会論文集 No.20130015(2013)
本論文は、コンクリートの破壊現象を解明するため、非局所モデルを用いない新しい損傷モデルを提案しており、独創性・新規性に優れている。従来のFEMを組み合わせて利用可能な、コンクリートの破壊力学モデルと整合した損傷モデルなので有効性が高く、将来性・発展性を大きく期待できる。
西川 憲明(海洋研究開発機構)
「選択的補間多項式による埋め込み境界法」日本計算工学会論文集 No.20120018(2012)
「埋め込み境界法の課題」への取り組みという研究は他にも多く見られるが、計算上の悪条件を緩和すべく、補間多項式の関数形を選択するという試みは独創性・新規性に優れている。直行格子法に対する埋め込み境界法は、実用性の高いアプローチであり有効性が高く、将来性・発展性を大きく期待できる。

(6)技術賞

藤澤 智光(プロメテック・ソフトウェア(株))
「Particleworks」
Particleworksは粒子法(MPS法)を解析エンジンとして採用したCAEソフトウェアであり、藤澤氏はParticleworksを開発したプロメテック・ソフトウェア株式会社の代表取締役である。MPS法は日本発の計算手法であり、従来の格子法では困難であったしぶきを含むような大変形自由表面を伴う液体の挙動に対して有効である。GPUを用いた分散メモリ並列処理機能を開発実装して、大規模なクラスター設備が無くても高速演算を可能にした。また、システムの開発・販売だけでなく、オープンセミナー等で理論的な背景の啓蒙にも力を入れており、計算工学の発展・普及に顕著に貢献している。

(7)論文奨励賞

松原 仁(琉球大学)
「捩り外力を受ける環状切欠き丸棒におけるファクトリールーフ状破断面の形成メカニズムに関する数値解析的検討」日本計算工学会論文集 No.20120016(2012)
四面体一次要素とSmeared crack modelとを組み合わせた興味深い方法を提案しており独創性に優れている。弾性解析をベースとした解析手法であり、計算アルゴリズムも明確で、安定した解析手法であるため、将来性を大きく期待できる。
越智 申久(大阪大学、現在は(株)JSOL)
「MPS陽解法と格子法の連成による溶接プロセスの数値シミュレーション」日本計算工学会論文集 No.20130005(2013)
溶接プロセスのシミュレーションというターゲットに対して、適切な手法を選択し、その結合等も含めた技術を開発したという点は高く評価できる。粒子系解法と格子系解法の相補的な利用は、工学的な解析を現実的な時間で行う上では有効であり、有用性は高く、将来性を大きく期待できる。

2012年度贈賞者リスト

(1)計算工学大賞

菊池 昇(ミシガン大学、豊田中央研究所)
菊池氏は、有限要素法及び最適化法の分野において長年にわたり多くの研究成果を残した。特に、(a)変分不等式に基づく接触問題の数理モデル、(b)アダプティブ有限要素法、(c)トポロジー最適化理論の構築と工学的応用、(d)均質化法に関して先駆的な研究を発信し続けた。2001年には非線形CAE協会を設立するなど、計算工学の学術的発展に多大なる貢献があった。

(2)功績賞

冨田 佳宏(福井工業大学)
冨田氏は、有限変形弾塑性理論とその有限要素法に関する研究、塑性不安定現象に関する研究、及び計算力学を援用した材料の力学的機能創成に関する研究の発展に大きく貢献した。さらに、日本計算工学会の評議員など国内の計算工学に関する多くの学会の運営を行うとともに、著名な国際学術誌の編集委員を務めるなど、計算工学に対する著しい貢献があった。
菊地 文雄(一橋大学)
菊地氏は、有限要素法を中心とした偏微分方程式の数値計算法の開発と数学的解析、特に、固体力学や電磁気学などへの応用など幅広い研究を行った。また、多くの論文や著書があり、日本計算工学会の評議員を務めるなど計算工学に対する著しい貢献があった。

(3)川井メダル

高野 直樹(慶応大学)
高野氏は、均質化法によるマルチスケール解析に関する研究を推進し、繊維強化プラスチック複合材料などの各種工業材料だけでなく生体組織にも応用範囲を広げている。科学技術振興機構のCRESTの研究代表者を務め、その成果が商用コードのVOXELCONに取り入れられるなど、社会貢献も果たしている。日本計算工学会では理事として、第16回および第17回計算工学講演会実行委員長やHQC分科会副主査を務め、計算工学の発展に多大な貢献があった。

(4)庄子メダル

佐々木 直哉((株)日立製作所)
佐々木氏は、マイクロトライボロジー分野におけるミクロシミュレーション研究の草分けである。特に、分子動力学シミュレーションを用いた摩擦摩耗の研究では多くの成果を挙げている。産業界におけるスーパーコンピュータの活用にも尽力しており、日本計算工学会では理事としてものづくり研究会の活動を積極的に行うなど、計算工学の発展に特別の貢献があった。

(5)論文賞

小野寺 直幸、青木 尊之、杉原 健太(東京工業大学)
「コンパクト差分を用いた高次精度マルチ・モーメント法の開発」日本計算工学会論文集 No.20100019(2010)
本論文は、保存型IDO法にコンパクト差分法を適用することで保存則を満たしつつ高波数領域で微分値の解像度が非常に高くなる計算法を開発し、実問題としてMaxwell方程式と非圧縮性Navier-Stokes方程式に適用してその有用性を確認しており、独創性・有用性を高く評価できる。
室谷 浩平、大地 雅俊(東京大学)、藤澤 智光(プロメテック・ソフトウェア(株))、越塚 誠一、吉村 忍(東京大学)
「ParMETIS を用いたMPS陽解法の分散メモリ型並列アルゴリズムの開発」日本計算工学会論文集 No.20120012(2012)
 本論文は、これまで分散メモリ型並列化においてロードバランスを取ることが困難であった粒子法に対して、METISライブラリを使用することで高いスケーラビリティが得られる計算法を提案しており、実用性・有用性を高く評価できる。

(6)技術賞

土居 博昭、李 銀生((独)原子力安全基盤機構)、中村 均(伊藤忠テクノソリューションズ(株))
「3次元自動き裂進展解析システム CRACK-FEM」
CRACK-FEMは原子炉機器溶接部などの複雑形状部材の3次元き裂の進展解析を完全に自動化することを目的に開発されたシステムである。従来は解析が困難であった溶接金属内の材料において選択的に進展する応力腐食割れのき裂進展に適用され、有用な成果が得られており、計算工学の発展に顕著に貢献したシステムである。
秋葉 博((株)アライドエンジニアリング)、吉村 忍(東京大学)、柴田 良教((株)アライドエンジニアリング)
「超並列大規模解析が可能な日本初商用構造解析ソフトウェアの開発」
吉村氏を代表者とする日本学術振興会の未来開拓事業において開発された構造解析ソフトウェアADVENTUREは、大規模モデルに適用できるという優れた特徴がある。その後、商用版(ADVC)が秋葉氏及び柴田氏により開発され、自動車エンジンの構造解析等に使われており、計算工学の発展に顕著に貢献したシステムである。

(7)論文奨励賞

山東 篤(和歌山工業高専)
「自動メッシュ分割を用いて重合メッシュ法の連成項を高精度に数値積分するための積分範囲の適切な分割方法」日本計算工学会論文集 No.20110011(2011)
本論文は、3次元問題への拡張がきわめて困難であった重合メッシュ法における積分範囲の分割に対してグルーピングによる前処理法を提案し、実際に3次元問題で高精度な数値積分を実行できることを示しており、今後の発展を期待することができる。
藤川 正毅(琉球大学)
「複素数階微分によるひずみエネルギ関数の1階・2階微分と超弾性モデルへの適用」日本計算工学会論文集 No.20110009(2011)
本論文は、ひずみエネルギ関数から応力値と接線剛性の両方を数値近似する計算方法を提案し、実際に等方性および異方性超弾性モデルに適用して解析解と同程度の精度が得られることを確認しており、今後の発展を期待することができる。

2011年度贈賞者リスト

(1)計算工学大賞

Oliver Pironneau (University of Paris Ⅵ 教授)
O. Pironneau氏は、有限要素法の数学理論、流れ問題への適用さらに形状最適化問題等に対して先駆的かつ顕著な業績を数多く残している。現在の有限要素法の数学理論の体系を構築したパイオニアの一人として国際的に高く評価されている。
また、日本の計算力学、特に有限要素法の数学理論および流れ問題への適用研究グループとの親交も深く、日本の当該分野の研究発展にも大きな影響を与えた。

(2)功績賞

竹内 則雄(法政大学)
竹内氏は、計算力学におけるアルゴリズム開発で顕著な成果を残してきた。特に、離散化極限解析手法の開発に関わる研究成果は、地盤力学、RC構造、生体力学、木材工学、雪氷工学など多岐の分野にわたっている。近年では、これらの研究を発展させたハイブリッド型ペナルティ法と呼ばれるオリジナルなモデルの開発を進めており、不連続性体力学に対する計算工学の確立に取り組んでいる。
また、本学会の設立当初から評議員、理事、副会長を務め、2008-2009年度には会長として本会の法人化など,学会の運営に尽力してきた.
石井 惠三((株)くいんと)
石井氏は、日本のCAE業界のリーダーの一人として、長年計算工学の普及と発展に貢献されてきた。特に、計算工学の研究成果を日本発のCAEソフトウェアとして製品化し、CAEの普及と発展に大きく貢献されてきた。また、学界との連携のみならず、CAEソフトウェアベンダ間の連携にも力を入れられてきた。
また、本学会の理事、副会長を歴任され、本会の法人化、産学連携の強化など,学会の運営に尽力してきた.

(3)川井メダル

山田 貴博(横浜国立大学)
山田氏は、計算力学における基礎研究として、固体および流体を含む連続体力学の問題に対する有限要素法に基づく様々なシミュレーション技術を開発している。特に、物理現象の再現だけでなく、数学的な合理性を手法の信頼性のよりどころとして、工学における実用化を目指したより良い方法の開発を行っており、固体および流体力学に関わる分野全体を視野に入れた横断的な研究を推進し、顕著な業績を残している。
また、本学会の理事を務めており、本学会の運営にも尽力している。

(4)庄子メダル

沢田 龍作(トヨタ自動車)
沢田氏は、企業においてCAEの開発普及に従事され、その成果を本学会の各種活動を通じて紹介し産業界のCAEの普及に大きく貢献している。特に、沢田氏が提唱している企画CAEは従来のCAEを設計の上流で適用する革新的な考え方であり、これが発端となって1D-CAE研究分科会の発足に繋がり、本学会が目指す「ものづくりのための計算工学」の実現に向け、先頭に立って本学会をリードしている。
また、本学会の理事・監事を努めており、本学会の運営にも尽力している。

(5)論文賞

柴沼 一樹(東京大学)
「XFEM近似の不完全性の修正 (第1報: 一般形の定式化と理論誤差解析)」日本計算工学会論文集 No.20110004(2011)
「XFEM 近似の不完全性の修正 (第2報:破壊力学問題への適用)」日本計算工学会論文集 No.20110007(2011)
本論文では、従来のXFEMと重み付きXFEMの問題点を理論的に明確化するとともに、その問題点を本質的に解決する方法として、PU-XFEMを提案している。また、提案手法の理論的な評価も行っており、独創性・新規性・発展性に大変優れている。
張 子賢、 萩原 一郎(東京工業大学)
「三角形メッシュを基に自動的なセグメンテーション手法」日本計算工学会論文集 No.20110001(2011)
本論文は,稜線の創出と,平面,球面,円筒面等の生成を系統的に行う方法論を提案している。また、実際のリバースエンジニアリングにおける点群からのCADモデル作成を、従来法より効率的かつ頑健に実行できることを示し、実用性・有用性に大変優れている。

(6)論文奨励賞

渡邊 育夢((独)物質・材料研究機構)
「テンソル内部変数を持つ有限ひずみ弾塑性構成モデルの定式化」日本計算工学会論文集 No.20100005(2010)
本論文は、複雑な材料挙動を取り扱うための材料構成式の取り扱いを提案しており、新規性に富む。実際に計算コードの中で使われることを考えて作られており、今後の研究の発展を特に期待することができる。
秋田 剛((独)宇宙航空研究開発機構)
「アンサンブルカルマンフィルタによるモデルパラメータ推定 ―大変形を伴う非線形複合構造システムへの適用―」日本計算工学会論文集 No.20100021(2010)
本論文は、アンサンブルカルマンフィルタの新しい応用分野を示した点で新規性に富む。提案されたパラメータ推定のアプローチが大変形を伴う構造物に適用可能であることを示しており、今後の研究の発展を特に期待することができる。

2010年度贈賞者リスト

(1)計算工学大賞

Peter Wriggers(Leibniz University of Hannover 教授)
P. Wriggers 氏は、接触問題の数値解法、分岐・座屈現象を含む有限変形問題の有限要素解析アルゴリズム、高性能有限要素、非均質材料のマルチスケール解析手法などの計算手法の開発に長年にわたり携わり、非線形固体計算力学の分野に多大な貢献をした。
また、氏は「Computational Contact Mechanics」や「Nonlinear Finite Element Methods」等の著名な教科書を著すと共に国際ジャーナル「Computational Mechanics」の編集委員長のほか、IACMの副会長を務めるなど、世界の計算力学分野を牽引してきた。

(2)功績賞

大西 有三(京都大学 教授)
大西氏は、岩盤工学における不連続性岩盤の挙動解析、地盤・岩盤流の地下水流動および汚染の解析手法、ならびに精密写真測量による地盤・岩盤変位計測技術について、その高度化と応用に関する研究を進めてきた。特に、不連続変形解析法の開発およびこれを用いたキーブロック安定解析に関する研究成果は、国内外でその業績が高く評価され、世界的な第一人者として種々の学会講演会で招待講演を行っている。
また、当該分野の数々の国際会議を実行委員長として企画・開催し、その発展と普及に貢献した。また、氏は2002年度~2005年度には本学会の理事を務め、学会の運営に尽力してきた。
坂井 藤一(FS 技術事務所 代表取締役)
坂井氏は、薄肉構造の3次元挙動解明に有限要素法を導入するなど、有限要素法の創成期からその発展に関わり、企業において多くの計算力学に関する論文を執筆されると共に設計・開発業務に計算工学手法を活用し計算工学の発展に尽力してきた。また、多くの大学にて客員教授や非常勤講師を勤め、計算工学の有用性を学生に啓蒙・教育してきた。
また、氏は1997年度~2002年度には本学会の理事、2000年度~2002年度には副会長を務め、学会の運営に尽力してきた。

(3)川井メダル

鈴木 克幸(東京大学 教授)
鈴木氏は、特に最適設計、ボクセル解析、マルチスケール解析の分野において先進的な研究を行っている。特に最適設計に関しては、全く新しい構造の創成手法として、均質化法を用いた位相最適化の研究を世界に先駆けて行い、位相最適化を実用の域まで高めた。また同氏は、提案手法を機械、土木、建築、造船といった様々な分野に横断的に適用する一方、バイオメカニクス、スポーツ、CGといった新しい分野への適用、実用化を進めている。
また、氏は本学会の設立時から学会の運営に尽力し、事業企画小委員会幹事、論文委員会幹事、論文委員会委員長などを務め、2007年度からは本学会の理事を務めている。

(4)庄子メダル

山村 和人(新日本製鐵)
山村氏は、計算工学を実際のものづくりに適用する視点から、数理最適化手法・逆解析手法の研究と応用、不連続体構造解析法の研究と応用、粒子法の研究と応用、プロセスモデリング、数値構造解析による設備設計・保全と幅広い応用研究で実績がある。また、企業における数値解析に関する技術者の育成に尽力している。さらに、計算工学講演会、WCCM、等でも講演を行い、企業現場での計算工学問題を広く外部へ公表している。
また、氏は本学会の設立にも深く関与し、2009年度からは本学会の理事を務めている。

(5)論文賞

小川 慧(東芝)、青木 尊之(東京工業大学)
「GPUによるマルチグリッド法を用いた2次元非圧縮性流体解析の高速計算」日本計算工学会論文集 No.20090021
本論文は、非圧縮性流体方程式をGPUにより高速に計算する手法を様々な観点から論じたものであり、CPUより圧倒的に高速計算が可能であることを実証している。本論文はGPU計算の指針を与えるものであり、独創性、実用性、将来性に大変優れている。
西浦 泰介(海洋研究開発機構)、坂口 秀(海洋研究開発機構)
「GPUを用いたDEMの高速化アルゴリズム」日本計算工学会論文集 No.20100007
本論文は、粒子法の一種であるDEMをGPUにより高速に計算する新しい並列アルゴリズムを提案し、高い有用性を示している。提案手法は、DEM以外の粒子系シミュレーションにも適用性があり、独創性、実用性、将来性に大変優れている。

(6)論文奨励賞

上原 拓也(山形大学)
「一方向凝固におけるセル状組織形成と応力分布のフェーズフィールドシミュレーション」日本計算工学会論文集 No.20090023
本論文は、一方向凝固過程で形成されるセル状組織内部の微視的応力分布を高精度に解析するために、フェーズフィールド法を用いる方法を提案し、その有効性を示している。本論文は、独創性、実用性、将来性に優れた論文で、今後の研究の発展を特に期待することができる。
仲村 岳(成蹊大学)
「均質化法による複合材のクラッシュ解析(その1:大変位弾性問題への適用)」日本計算工学会論文集 No.20100011
本論文は、ハニカム材の衝撃圧壊特性を高精度かつ高速に解くための手法として、均質化法と動的陽解法を用いる手法を提案し、その有効性を示している。本論文は、独創性、実用性、将来性に優れた論文で、今後の研究の発展を特に期待することができる。

(7)功労賞

佐藤 一雄(防災科学研究所)
佐藤氏は、わが国における原子力・防災分野におけるスーパーコンピュータの利用およびシステム開発を主導すると共に、2001年度~2005年度において、日本計算工学会が参加した研究開発プロジェクトを推進した。
また、氏は2002年度~2007年度に、本学会の理事を務め、学会の運営に尽力してきた。

2009年度贈賞者リスト

表彰委員会における厳正な審査の結果、平成 21年度につきましては下記の方々が受賞され、6月23日に開催された総会において表彰されました。

計算工学大賞

David Roger Jones Owen (Professor. Swansea University)
Owen氏は有限ひずみを伴う弾塑性問題に対する数値解析手法,ならびに亀裂性材料や粒状体の数値シミュレーション手法を開発するなど,長年にわたって計算力学分野の発展に多大なる貢献をしてきた。氏の開発されたこれらの手法は、今日多くの汎用有限要素法ソフトウェアに実装されており,結果的に多くの解析に利用されている。また、氏の書かれた日本語訳「塑性の有限要素法」をはじめとする、多くの教科書が日本でも使われ,学生や技術者の教育に大きく貢献してきた。

功績賞

谷口 健男(岡山大学大学院 教授)
谷口氏は有限要素法解析におけるプリプロセスに関する研究に先鞭をつけ、特に形状モデリングとメッシュ生成法に関する優れた業績を数多く上げるとともに、出版されたメッシュ生成法に関する本は、この分野のバイブル的な書となっており、当該分野の発展と普及に大きく貢献した。
また、氏は2004年より本学会の監事を務め、学会の運営に尽力してきた。
藤井 孝蔵(宇宙航空研究開発機構 教授)
藤井氏は、航空宇宙工学における数値流体力学(CFD)の高度化と応用を中心に研究を進めてきた。その研究は計算法の開発から可視化法まで幅広く、また応用もトンネル微気圧波の研究など航空宇宙分野に限らない。その成果は国際的にも高く評価され、内外の種々の学会講演会で招待講演を行っている。また、当該分野の数々の国際会議を実行委員長として企画・開催し、その発展と普及に貢献した。
氏は本学会でも平成13~15年に理事、平成16~17年に副会長、平成18~19年度には本会会長として、学会の運営に大いに尽力してきた。

川井メダル

越塚 誠一(東京大学大学院 教授)
越塚氏はメッシュを用いない数値解析法である粒子法として,独自にMPS法(Moving Particle Semi-implicit Method)を開発した.このMPS法は大変形を伴う流体解析や構造解析が可能で,その応用は原子力工学,船舶工学,マイクロ流体,生体力学など様々な分野に広がっている.さらにシミュレーションとコンピュータグラフィックスの融合を目指すビジュアル・エンジニアリングという新たな分野を切り開いている。
氏は平成18年度から本学会の理事を務め、学会の運営にも大きく貢献している.

庄子メダル

手塚 明((独)産業技術総合研究所)
手塚氏は、計算力学の研究者として、モデリングに関わる計算力学研究と、流体・構造・最適設計等の応用展開の両方を行い、計算工学の研究マネージャとして、「離散化数値解法のための並列計算プラットフォーム」(Parallel Computing Platform/PCP)をみずほ情報総研と共同開発し公開、近年ではBEANS(Bio Electoro-mechanical Autonomous Nano Systems)プロジェクトなどのプロジェクトで活躍してきた。氏は、このように製造分野を主とする計算工学の研究リーダとして、企業と連携した資金提供型共同研究で大きな成果をあげている。

論文賞

山田 知典(日本原子力研究開発機構)、荻野 正雄(九州大学)、吉村 忍(東京大学)
「バランシング領域分割法の最適領域分割数の予測とその数値検証」日本計算工学会論文集 No.20090014 (2009)
本論文は、領域分割法の効率を高める研究であり、大規模問題に適用して有効な結果が得られている。実際に大規模問題を解く際の指針を与えるものであり、独創性、実用性、将来性に大変優れている。

論文奨励賞

田中 正幸(東芝)
「解像度可変型MPS法」日本計算工学会論文集 No.20090001 (2009)
本論文は、粒子法の一種であるMPS法に関して、Adaptiveに解像度を変更する方法を提案している。粒子法において局所的に解像度を高くすることを可能にするものであり、独創性、実用性、将来性に優れるとともに、今後の発展を特に期待することができる。

2008年度贈賞者リスト

計算工学大賞

Eugenio Onate

功績賞

小林 敏雄 (財団法人日本自動車研究所)
小林 昭一 (京都大学)
川原 睦人 (中央大学)

川井メダル

大林 茂 (東北大学流体科学研究所)

庄子メダル

岩井 信弘 (日産自動車株式会社)

論文賞

1.「粘弾性面外波動問題における演算子積分時間領域境界要素法および高速多重極法の適用」
日本計算工学会論文集, No.20080011, 2008
「粘弾性面内波動問題における演算子積分時間領域境界要素法および高速多重極法の適用」
日本計算工学会論文集, No.20080021, 2008 斎藤 隆泰、福井 卓雄、廣瀬 壮一
2.「レベルセット仮想粒子による界面処理を用いた固定メッシュに基づく流体構造連成解析手法の開発」
日本計算工学会論文集, No.20080028, 2008 橋本 学

論文奨励賞

1.「レベルセット法に基づくコンプライアント熱アクチュエータの構造最適化」
日本計算工学会論文集, No.20080007, 2008 山田 崇恭

2007年度贈賞者リスト

計算工学大賞

Thomas J.R.Hughes

功績賞

武田 洋 (法政大学)
白鳥 正樹 (横浜国立大学)
田子 精男 (金沢大学)
矢川 元基 (東洋大学)

川井メダル

樫山 和男 (中央大学)

庄子メダル

宮地 英生 (株式会社ケイ・ジー・ティー)

論文賞

1.「導波特性を設計目標とする電磁波導波路のトポロジー最適化」
日本計算工学会論文集, No.20070025, 2007 西脇 眞二, 吉村 允孝

論文奨励賞

1.「連成面追跡型ALEローカルメッシュとImmersed boundary 型グローバルメッシュによる流体・シェル大変形連成解析用の重合メッシュ法」
日本計算工学会論文集, No.20070029, 2007 澤田 有弘
2.「グラッフィックスハードウェアを用いた個別要素法の高速化」
日本計算工学会論文集, No.20070011, 2007
「GPUを用いた粒子法シミュレーションのためのスライスデータ構造」
日本計算工学会論文集, No.20070028, 2007 原田 隆宏

2006年度贈賞者リスト

功績賞

吉田 裕 (関東学院大学)
登坂 宣好 (前日本大学)
大坪 英臣 (法政大学)
渡辺 貞 ((独)理化学研究所)

川井メダル

野口 裕久 (慶應義塾大学)

功労賞

佐々木 猛 (サンコーコンサルタント株式会社)

論文賞

1.「多重被覆モデリングによる有限被覆法 -非均質脆性材料の不連続面進展解析-」
日本計算工学会論文集, No.20060029, 2006 車谷 麻緒, 寺田 賢二郎
2.「量子大規模固有値問題における共役勾配法の収束性:適応的シフト前処理の収束性の評価」
日本計算工学会論文集, No.20060027, 2006 山田 進

奨励賞

1.「ボクセル有限要素法による大規模圧電解析用ソルバーの開発」
計算工学講演会論文集, Vol.11, pp799-802, 2006 浅井 光輝
2.ネットワーク分散型ライセンスシェアリングシステムの構築」
計算工学講演会論文集, Vol.11,pp529-530, 2006 寺元 貴幸

2005年度贈賞者リスト

論文賞

1.「ALE有限要素法による弾性棒の大変形解析」
日本計算工学会論文集, No.20050003, 2005 山田 貴博
2.「局所接触探索への遺伝的プログラミングの適用(第2報:並列分散GPによる高速化)」
日本計算工学会論文集, No.20040026, 2004 大石 篤哉, 吉村 忍

奨励賞

1.「Phase-Field法とマルチスケール解析による材料設計支援ツールの開発」
計算工学講演会論文集,Vol.10, pp.469-472, 2005 松井 和己
2.「数値計算ポリシー入力型の行列計算ライブラリ構成方式」
計算工学講演会論文集, Vol.10, pp.235-238, 2005 直野 健
3.「溶融ガラスの熱対流現象の有限要素解析」
計算工学講演会論文集, Vol.10, pp.673-674, 2005 田上 大助
4.「整合圧力ポアソン方程式に基づくシェル流体強連成解法の並列化」
計算工学講演会論文集, Vol.10, pp.31-34, 2005 石原 大輔

2004年度贈賞者リスト

論文賞

1.「有限体積格子ボルツマン法を用いた流体解析」
日本計算工学会論文集, No.2004005, 2004 小沢 拓, 米津 豊作, 棚橋 隆彦
2.「差分近似Hessianを用いた非線形共役勾配法:実空間第一原理計算への適用」
日本計算工学会論文集, No.20040023, 2004 櫛田 慶幸, 奥田 洋司
3.「粒子法によるジェット分散挙動の数値解析」
日本計算工学会論文集, No.20040013, 2004 柴田 和也, 越塚 誠一, 岡 芳明

奨励賞

1.「接点ベース有限要素法によるフレッシュコンクリートの流動解析」
計算工学講演会論文集, Vol.9, pp.569-572, 2004 富山 潤
2.「構造格子コースグリッドによる簡易アセンブリ解析」
計算工学講演会論文集, Vol.9, pp.95-96, 2004 山田 知典
3.「気泡関数要素安定化法を用いた気液二相流三次元解析」
計算工学講演会論文集, Vol.9, pp.587-590, 2004 松本 純一

2003年度贈賞者リスト

奨励賞

1.「歩行者頭部保護のための自動車車体構造数値シュミレーション」
計算工学講演会論文集, Vol.8, No.1, pp.187-190, 2003.5 岩井 信弘
2.「自由境界面生成による破断解析」
計算工学講演会論文集, Vol.8, No.2, pp.593-596, 2003.5 岡澤 重信
3.「入射ビームプロファイルを考慮した弾性波動場の可視化」
計算工学講演会論文集, Vol.8, No.2, pp.677-680, 2003.5 中畑 和之

2002年度贈賞者リスト

論文賞

1.「Kinematically correct formulation for two-scale finite deformation problems」
日本計算工学会論文集, Vol. 2, 2000, pp.53-62/ 20000006 寺田 賢二郎・斉木 功・松井 和巳
2.「階層型領域分割法による3次元渦電流解析」
日本計算工学会論文集, Vol.3, 2001, pp.53-62/ 20010017 金山 寛・塩谷 隆二・田上 大助・斉藤 雅浩
3.「並列分子ステンシルの開発」
日本計算工学会論文集、Vol.4, 2002, pp.225 -230/ 20020015 清水 大志・君塚 肇・蕪木 英雄・荒川 忠一

奨励賞

1.「金融市場における日中変動シミュレーション」
計算工学講演会論文集, Vol.7, No.1, pp.283-286, 2002.5 尹 煕元
2.「シェル・ソリッド重合メッシュ解析による表面き裂の解析 」
計算工学講演会論文集, Vol.7, No.2, pp.525-528, 2002.5 中住 昭吾

2001年度贈賞者リスト

奨励賞

1.「探索エージェントによる多点同時探索戦略を用いた最適設計法に関する研究」
計算工学講演会論文集, Vol.6, No.2, pp.699-702, 2001.5 宮下 朋之
2.「階層型領域分割法による1億自由度並列有限要素解析」
計算工学会論文集, Vol.3, pp.201-206, 2001.5 塩谷 隆二
3.「新しい気泡関数要素の開発と評価」
計算工学講演会論文集, Vol.6, No.1, pp.83-86, 2001.5 奥村 弘

2000年度贈賞者リスト

奨励賞

1.「合同な部分領域への分割による3次元球殻内熱対流問題の並列計算」
計算工学講演会論文集, Vol.5, No.1, pp.165-168, 2000.5 鈴木 厚
2.「新しい離散化解析法の実用化に関する研究(IV)-無節点板曲げ要素に関する研究-」
計算工学講演会論文集, Vol.5, No.1, pp.433-434, 2000.5 北山 光也
3.「セル構造体のマルチスケールモデリングのための一般化収束論による一定式化」
計算工学講演会論文集, Vol.5, No.2, pp.749-752, 2000.5 斉木 功

功績賞

第2代会長 庄子 幹雄

その他(感謝状)

学界の運営・発展に尽力いただいた曽田前副会長、前田前事務局長および小林監事に感謝状を贈呈

1999年度贈賞者リスト

奨励賞

1.「微視構造の引張破壊を考慮したコンクリート材料の巨視的縮挙動の数値解析」
計算工学講演会論文集, Vol.4, No.2, pp.729-732, 1999.5 永井 学志
2.「自動車の安全装備に対する統計的設計支援システムの適用」
計算工学講演会論文集, Vol.4, No.2, pp.543-546, 1999.5 矢島 秀起