会長挨拶
(一社)日本計算工学会第14 代会長 磯部 大吾郎
(一社)日本計算工学会は、1994年開催の第3回世界計算力学会議(WCCMIII、千葉)を契機に任意団体として1995年に設立され、2010年の法人化を経て現在に至っております。法人化に伴い先人たちにより定款および各種規程類が策定され、重ねての改定・整備が行われた結果、その運営体制も安定したものとなりつつあります。しかしその一方で、ここ数年の新型コロナウイルス感染症の世界的拡大により社会経済活動の縮小が余儀なくされ、特に国際会議、講演会や講習会などの本学会の事業にも大きな影を落としております。これを機に今一度原点に立ち返り、エンジニアの存在意義、それを支援するための学会の在り方、社会との関わり方について熟考するべき時期に来ているものと思われます。計算工学・計算力学分野の進歩が広く社会に認知されつつあることは間違いありませんが、この分野における国内随一の法人学会としてさらにその発信力を高め、社会や産業界のニーズに合わせた活動を促進することが重要であると考えております。
このような状況を踏まえ、私の任期期間の活動方針として『ポストコロナ時代を見据えた計算工学・計算力学分野に関わるエンジニアの育成・支援と国際活動の推進、責任ある法人学会としての情報発信力の強化、社会や産業界から必要とされる学会活動の拡充』の3本柱を掲げたいと思います。以下に具体的な方針を記します。
(A)計算工学・計算力学分野に関わるエンジニアの育成・支援と国際活動の推進
主力行事である計算工学講演会を始めとして、研究会、講習会、サマーキャンプなどの事業を通じて計算工学・計算力学分野に関わる若手を含むエンジニアの育成をさらに進めます。また、IACMが主催する国際会議への参加支援を目的とした基金の運用、さらにはWCCMやCOMPSAFEなどの国際会議を主催・共催・支援することで、産官学界のエンジニアが国際的に交流し議論する場を提供します。ポストコロナ時代を見据え、オンライン・ハイブリッド・対面に関わらず、これらの活動が会員にとってさらに魅力的かつ有益なものとなる仕組みについて検討いたします。
(B)責任ある法人学会としての情報発信力の強化
計算工学・計算力学分野における国内随一の法人学会として、質の高い論文集・会誌・書籍の発行を推進します。中でも、掲載論文の中から特にベンチマークとなり得る解析事例を抽出し、その詳細を記したデータ論文(仮称)の扱いについて検討を進めます。また、和文・英文ホームページのコンテンツを充実させ、本学会の活動を国内外に広く発信することに努めます。
(C)社会や産業界から必要とされる学会活動の拡充
広く社会や産業界から安心して情報提供を委託されるように学会運営の透明性・公平性を強化するとともに、他学協会との連携を深め、共催行事などの企画を検討します。また、一般社団法人としての倫理を遵守しながら健全な財政運営を維持し、会員・広報事業の活性化等により会員数のさらなる増員を目指します。
様々な活動が制限される難しい時代ですが、会員の皆様にとって有益な情報を発信し、ポストコロナ時代を見据えて交流の場を積極的に拡げていく所存です。会員の皆様のご協力,ご指導,ご鞭撻のほどよろしくお願い申し上げます。
磯部 大吾郎(いそべ だいごろう)
1994年 東京大学大学院工学系研究科博士課程 船舶海洋工学専攻 修了、博士(工学)
1994年 東京大学生産技術研究所第2部 助手
1995年 筑波大学 構造工学系 講師
助教授、准教授を経て
2013年 筑波大学 システム情報系 教授 現在に至る。
建物の崩壊解析手法、非構造部材の挙動解析手法、有限要素法を用いたロボット機構の制御手法、トルクキャンセリングシステムの開発などに従事。専門は計算構造工学、機構制御。
(一社)日本計算工学会理事(2012~)、同副会長(2020~2022)、IACM General Council member(2013~)、IWACOM-III議長(2014~2015)、COMPSAFE 2020議長(2018~2020)
市村学術賞貢献賞(2014)、川井メダル(2015)、(一社)日本機械学会計算力学部門業績賞(2019)、(一社)日本機械学会フェロー(2021)